医療関係者の方へ(研修医・学生)

大阪市立大学大学院医学研究科麻酔科学講座

臨床実習(Clinical Clerkship)

麻酔科・ペインクリニック科実習心得

(1) 麻酔科臨床実習に当たっては下記の事項を遵守していただきたい。

a. 時間厳守
麻酔科実習期間中は7時55分(抄読会・勉強会の日は7時45分)に病院4Fの麻酔科監視室に集合する。解散時刻は原則17時である。詳細は実習予定表を参照のこと。
b. 服装・所持品について
麻酔科実習(手術室内)時は上下ともに青の術衣を着用し、帽子は白帽子を着用する。ペインクリニック実習・教授口頭試問時は白衣を着用する。名札は術衣・白衣どちらを着用しているときもつけておく。
c. 清潔保持
手術室内では帽子とマスクを必ず着用する。帽子は頭髪の露出を最小限にするように被る。心臓外科・整形外科・脳神経外科の手術時にはディスポーザブルの帽子も着用する。手術室入退室時には手洗いもしくは手指へのアルコール噴霧を行う。処置時には手袋を着用する。汚れた手袋はすぐに廃棄して新しい手袋を着用する。
d. プライバシーへの配慮について
患者情報を特定できるものは麻酔科医局外への持ち出しを禁ずる。病名・予後などに関する発言は患者の前では慎む。

(2) 実習の目的

1週間という限られた期間で下記の目的を達せねばならない。
1-2年後には手持ちの知識と技術のみで周術期管理と疼痛管理を行わねばならないが、多くの者にとってこれからの1週間がその知識の大半を得る最後の機会となるからである。麻酔科学を学ぶ前提として生理学・薬理学・解剖学の知識も必要となるのでこの機会に復習していただきたい。

a. 手術患者の周術期管理の知識の習得
手術を行う診療科を将来選択した場合、周術期に起こりえる狭心症や喘息などの併存疾患の初期評価と初期治療は自らの責任と能力のもとで行わねばならない。
b. 疼痛管理・緩和医療の知識の習得
あらゆる診療科において患者が心身の苦痛を訴えることは起こりえる。各種ガイドラインとエビデンスに則った診療を自らの責任と能力のもとで行わねばならない。

(3) 実習内容

a. チェックリスト
詳細はチェックリストを参照。経験すべき実習内容はチェックリストとして配布する。木曜日17時に医局秘書に提出する。
b. 麻酔症例と指導医の割り当て
前日の正午までに担当症例と担当指導医の割り当てを行う。麻酔科医局の手術予定表を参照のこと。プレゼン担当症例の割り当ても同時に行う。
c. 麻酔症例のプレゼンテーション
水曜日ないしは木曜日に行う。プレゼンに許される時間はせいぜい2分である。月・火曜日に行われるプレゼンを参考にすると良い。プレゼンの形式は以下に則って行う。
① どの手術室の何番目のOpeか
② 年齢、性別、身長、体重
③ 病名、術式
④ 予定手術時間
⑤ 体位
⑥ 予想出血量、準備輸血量
⑦ 現病歴
⑧ 既往歴
⑨ 現疾患、併存疾患の評価と術前治療
⑩ 麻酔計画(全身麻酔or硬膜外麻酔or脊椎麻酔)、(追加の)モニタリング (A line、CVPなど)
[※備考]
① 心外や脳外等、部屋が決まっている場合は省略可
② 標準的な体格の場合は省略
⑤ 術式から仰臥位とわかりきっている場合は省略。逆に術中体位変換を伴う場合は省略不可
⑥ 電子カルテの「コンテンツ作成フォルダ」のエクセルシートで算出できる。出血の可能性の低い術式では省略可
⑦ 麻酔に関係ない病歴は不必要。診断に至った経緯を述べる者が多いが、概ね不要。
⑧ 麻酔に関係ない既往歴は省略。薬剤名は商品名ではなく一般名で。自分のわからない略語は使用しない。略語は頻出語であることが多いため、調べて理解しておくことが望ましい。
⑨ まず、徹底的に情報を収集する。それらが、神経系、循環器系、呼吸器系、消化器系、肝胆膵、泌尿器系、血液凝固系のいずれに影響を与えるかを考える。自分の理解できない略語は用いず、薬剤名は商品名ではなく一般名とする。問題がリストアップされれば、身体的評価としてどの程度の重症度、例えばNYHA分類やChild分類かを評価する。そしてさらに検査による分類、たとえば心エコーによる駆出率やICG検査の値などを確認する。そのように評価された問題が術前にどのように解決、軽減されているか、を述べる。例えば狭心症であれば、ニトログリセリンを処方され、狭心発作が消失した、など。
⑩ しかし、現疾患、併存疾患ともに多くは術前の根治が不可であり、術中にも発生し得る問題として手術室に持ち込まれる。最終的には、まず麻酔方法(全身麻酔、脊椎麻酔、硬膜外麻酔併用全身麻酔の3択) を述べ、術中に起こり得る病態をどのように検知し、それに対応するための計画を述べる。例えば、喘息であれば、術中発作が起こりえるので呼吸音に注意し、カプノグラム波形に留意する、発作時は吸入麻酔を深めるか、吸入β刺激薬を用いるなど。ルーチンのモニター(心電図、非観血的血圧測定、パルスオキシメータ、体温測定など)以外に追加のモニター(A-line、中心静脈カテーテル、肺動脈カテーテル、経食道心エコー、筋弛緩モニターなど)が必要であれば、必要性の理由と共に追加のモニター項目を述べる。挿管困難が予想される場合や、Full Stomachの場合は麻酔導入方法を変えねばならない。通常の導入と異なる導入の場合はこれについても述べる。
d. 口頭試問
最終日に、教授による口頭試問が行われる。試問内容はプレゼンテーション症例の術中、術後経過に関するものである。質問項目はあらかじめ別紙配布してあるので各自答えを準備しておくこと。

(4) 情報検索

  • 「魚をとってやる」のではなく、「魚のとり方を教える」のが我々の目的である。課題達成のために下記の情報源は最大限に活用していただきたい。
  • 医局にいるどの医師もよほど多忙でない限り気軽に尋ねてくれて構わない。特にプレゼン症例の麻酔担当医、指導医、もしくはその日に見学している症例の担当医がオススメ。
    • カルテには略語が多用されているが人に聞く方が早い。
    • 薬剤については、ソフトウェアDicswinや電子カルテの薬剤ガイドラインで調べればよい。
  • 参考書は、STEP麻酔科学、標準麻酔科学などを薦める。進歩が急激な麻酔科学に追随している麻酔科の教科書は多くはない。
  • 医局内 は無線LAN使用可能であり、各自ノートパソコンなどを持ちこんでも構わない。また、医局の電子カルテは勿論、インターネット端末も座ったもの勝ちで使用して構わない。書棚の本も自由に参照・複写してよいが、必ず元の場所に戻すこと。

(5) 参考図書

  • 周術期管理チームテキスト第3版 麻酔科学会純正の教科書で内容もわかりやすい。
  • Miller’s Anesthesia 8th ed: 麻酔科領域の最も権威ある教科書
  • 標準麻酔科学 第6版: 現在の日本語の麻酔科の教科書では比較的内容が新しい。
  • STEP麻酔科 第4版: よくまとまっている。
  • 心臓手術の周術期管理 メディカルサイエンスインターナショナル 2008: 心臓外科症例の予習に便利